単純な場所

sophisticated girl; plain space

交渉人

『交渉人』を観る。ロードショウ時からチェックはしていたものの、ままならない人生である。

噂通り、面白いのだが、より高みを求めたくなるのは人の常。物語構成の瑕疵はセイビアン登場以前のシークエンスが不要であることに尽きる。予め無実であることが保証された主人公の、その汚名を晴すための2時間20分がいけないとは言わないが、サスペンスとしては間が抜けていると言わざるを得まい。大体がセイビアンとその家族のエピソードは、映画の冒頭にあってこそ映えるだろうに、サミュエル・L・ジャクソンのために余分なフィルムを用意しなければなかったとするならば、2大スター共演映画というのも罪作りなものである。『シェーン』のラストシーンにまつわる蘊蓄を登場人物に語らせるのなら、写さずして観せることの意味を脚本家は知らねばならないが、そう考えるとそんな蘊蓄が出てくることこそが、不本意なシナリオを書かされた脚本家の抵抗なのかと穿ってみたり。

また、劇場公開時は「IQ180同士の頭脳戦」というアオリがあったと思うのだが、あまり冴えがみえないと言うのも難点といえば難点。彼等は天才ではなく、幾分、粗暴だか普通の人間だと言われれば素直に納得するまでである。

とはいえ、例えばラストにてその他の容疑者の潔白を印象づける手際など、特筆すべき点があるのも確か。サミュエル・L・ジャクソンとケビン・スペーシーもそりゃ勿論、カッコええ。

いいんだけどなぁ。仕掛けが警官の不正だとして、組織ぐるみ不正を隠蔽してしまう警察を知る人間から見ると結局、牧歌的という他ないよな。

Published on: 1999/11/20

Categories: 映画