単純な場所

sophisticated girl; plain space

どうせ死ぬなら、パリで死のう。

『どうせ死ぬなら、パリで死のう。』を観る。岡山天音が主演のNHKのドラマで、エミール・シオランに傾倒する大学の非常勤講師が、どうにもならないズタボロの人生を生きる話。反出生主義を唱えたシオランは、出生と出産を否定してただ生まれなければよかったと思いながら、しかし84歳まで生きて天寿を全うしたという話が、姉の出産で面倒をみることになった甥との生活の中で語られる。大学の働き口は見つからずどうにも行き詰まった人生だったとしても、実際の出産に立ち会った結果として「どうせ死ぬなら、パリで死のう。」と思えるのであれば、その人生には味というものがある。

こういう複雑な話をある意味で安心して観ることができるのもNHKの制作であるからに違いなく、生きる意味を簡単に導出するような物語とは異なる。岡山天音がまたぴったりという他ない雰囲気で、『べらぼう』に続いて実にいいのである。

Published on: 2025/7/14

Categories: 映画