戦争犯罪と闘う
赤根智子『戦争犯罪と闘う 国際刑事裁判所は屈しない』を読む。本書のタイトルが力強く宣言しているのが意思の部分であるとすれば、これを実現する原理は「法による支配」であり、「力による支配」を明確に否定する立場は序文から語られる。そこに記されているのはプーチンの逮捕状を発付したがゆえのプーチンによる赤根氏本人の指名手配の経緯であり、そもそも本書が書かれたのは、おそらく米国によるICCへの制裁の可能性の高まりを憂慮してのことであれば、こんにち、「法による支配」は風前の灯というべきだろう。
懸念は現実となり、米国の財務省が赤根所長を米国の金融システムから切り離すかたちでの経済制裁の対象とすることを発表したのはこの8月のことである。それは予期できたこととはいえ、個人に対する実際の影響は甚大であり、その定めが不透明であることによって派生的にも様々な制約を受けることになる。それもこれも「法による支配」を希求したがゆえであれば、これほど理不尽な話はない。
そしてこの不条理に対し、かつてICC判事への立候補を頼み込んだ日本政府が残念レベルの意向表明にとどまっているのは、まずいかにも弱腰と批判されても仕方ない。同じ財務省に、自国の財政・金融政策をとやかく言われている上でのこの事態なのである。そして今や外国法に対するブロッキング規制は、アメリカの所業を想定して真剣に検討するべきものであろう。
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