2025年に観た映画のこと
2025年もそれなりに映画は観たけれど、もちろん引き続き配信を中心とした視聴習慣であり、ピックアップも映画というよりはドラマシリーズに侵食されている自覚がある。なにしろ今年は映画館に一度も足を運んでいないから、まずはそこから反省しなければならないのである。
ハウス・オブ・ダイナマイト
キャスリン・ビグロー監督の『ハウス・オブ・ダイナマイト』は冷戦以来、一般の国民からすると遠い話題となっていた核抑止の問題をあらためて意識させたという点でエポックを画す一作となったというべきではないだろうか。
かつて領土内に保有した核兵器を放棄することによって国際社会の枠組みに参画したウクライナが、その挙句に米国の圧力を受けつつ領土を割譲することにでもなれば、従来の核不拡散の枠組みは崩壊することになる。
それがもたらすのは、もちろんいつか来た道と同じ核兵器による軍拡競争であり、米国が世界の警察官を降りるということが方針として示されたこの年、数年来の地政学上の緊張は緩和するどころか、ここを起点として一層、高まっていくことになるだろう。
そして本邦でも年末に政府高官が核保有をすべきという発言をしたという報道があったけれど、戦後80年にわたり機能してたはずのタガが目に見えて緩み始めたタイミングとして2025年は記憶されることになる。
この状況にあって登場した『ハウス・オブ・ダイナマイト』が描いた危機は、1961年の『世界大戦争』と似て、しかし今日的にリアルというほかない状況を扱っていたのである。かつて『ウォー・ゲーム』は熱核戦争の阻止を題材にしたけれど、本作はすでに手遅れとなった状況を前提に語られるところが決定的に異なり、それも時代の空気というものではないだろうか。
機動戦士Gundam GQuuuuuuX
核の物語とはだいぶ異なる話ではあるけれど『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』もまた、1979年、ファーストガンダムで語られた物語を2025年に再構築することでインパクトのある世界を現出せしめた。
その方法は株式会社カラーのいつものやり方ではあるけれど、作品世界の語り直しではなく、地続きにもなっているパラレルワールドの物語は一層、滋味深かったのである。
新幹線大爆破
司令室もの好きとしての今年の収穫には、まずこちらでも『ハウス・オブ・ダイナマイト』が想起されるけれど、樋口真嗣監督の『新幹線大爆破』ももちろん挙げておかなければならない。
本作も含めて、ここまでの作品はどれもかつて語られた物語のリバイバルという構造を持つもち、もちろん物語は常に先行する世界観の上に積み重ねられるものなのではあるけれど、その構造が顕著な傾向として現れた年だったという点に着目してもいいのかも知れない。
僕達はまだその星の校則を知らない
カンテレのドラマにはときどきハマることがあって、今年の『僕達はまだその星の校則を知らない』はオンエアが終わってから一気に観て楽しんだ。
磯村勇斗が演じるスクールロイヤーの個性が、結局のところあまり違和感なく受け入れられているというのがここに構築された世界の優しさで、それ懐の深さを体現している幸田珠々先生こと堀田真由のキャラクターが際立って好印象だったのがポイントかもしれない。
しあわせは食べて寝て待て / ひらやすみ
NHKのドラマではこの2作であろう。桜井ユキ主演の『しあわせは食べて寝て待て』も、体調に由来する生きづらさを抱える主人公が、しんどいながらも居場所を見つける物語。多様性の受容がいまだにドラマの題材になってしまうこと自体、現実がそうではないことの裏返しではあるとはいえ。
そしてリノベ団地ものという潮流が示しているのは、食に加えて居心地のいい住居があればなんとかなるということなのだろうけれど、それもまた容易には手に入れられないものだとすれば、この世界はやはり生きづらいものなのである。
一方、岡山天音が主人公を演じた『ひらやすみ』は阿佐ヶ谷というスタイルもあって、いろんなハードルを無効化してくれた感がある。ロールモデルとしては、こちらのほうがずいぶんと心強い気がしたものだが、結局のところ、この社会にあっては住の問題からの解放が人間を自由にするということかもしれない。
ホットスポット
バカリズム脚本の『ホットスポット』はオンエアを楽しみにして、欠かさず観たものである。レイクホテル浅ノ湖となった精進湖畔の精進マウントホテルを見物に出かけ、いわゆる聖地巡礼まで敢行したのは今年の3月のことである。
同じくバカリズム脚本で、2027年前期の朝ドラが長野県諏訪ならぬ佐和を舞台とした『巡るスワン』になるということが発表されたのが11月で、これは再来年の話になるけれど今から楽しみ。
スロウトレイン
ずいぶんと昔のことのような気もするけれど、松たか子主演の『スロウトレイン』は正月ドラマとはかくありたいという題材、テンポ、ストーリーで、さすが野木亜紀子の脚本だと感心したものである。
野木亜紀子脚本といえば、本来なら昨年観ておくべき『ラストマイル』を鑑賞したのも今年に入ってから。『アンナチュラル』が2018年の作品だということを確認して愕然としたわけだが、年末にかけては『ちょっとだけエスパー』もあって、その仕事は着々と積み上がっている。
エスクワイア
振り返ってみると今年は韓国ドラマの比重がやや低めだったのだけれど、『エスクワイア』は弁護士ものとして一頭地を抜いており、実に韓国ドラマらしいストーリーと構成で楽しんだのである。
Published on: 2025/12/21
Categories: 映画